Ten Years After
Losing The Dogs
速弾きの後の沈黙
ブルースロックの技巧が内省へと折り返す瞬間を捉えた一曲│ギターは速弾きの誇示を抑え感情の揺らぎを丁寧に描く│60年代末の成功とツアー生活の疲弊が背景にあり名声の代償を静かに吐露する内容が胸に残る│英国ブルースが労働者の音楽から個人の告白へ変質していく過程を映し出す│派手さの陰に潜んだこの曲はバンドの成熟を示す隠れた要石として機能している
Slade
The Soul, the Roll and the Motion
魂で転がすグラムロック
グラムロックの祝祭性を労働者階級の身体感覚へと引き戻す一曲│荒々しいシャウトは技巧より衝動を優先しロックンロールの原初的快楽を肯定する│70年代英国の不況と閉塞の中で踊り叫ぶこと自体がささやかな抵抗だった時代背景も透けて見える│タイトルが示す魂と身体と動きの直結はスレイドの美学そのもの│スタジアム向けの派手さの裏で路上の汗と騒音を忘れない姿勢がこの曲を長く生かしている
Free Band
Wishing Well
疑念と不安が鳴らすブルース
70年代英国ブルースロックが内省と幻想へと沈み込む名曲│歌声は欲望と不安を同時に抱え込み重力のあるグルーヴの中で人間の弱さをさらけ出す│名声を得た若きバンドが成功の裏で感じた空虚と疑念が歌詞に滲みロックが自己神話を疑い始めた時代の空気を映す│幻想的な歌詞はオカルトや神秘思想が流行した当時の英国文化とも共振│ハードさより深度で聴かせる彼らの成熟を刻んだ一曲
Delaney Bramlett
Are You A Beatle Or A Rolling Stone
神話の分かれ道を問いかける
60年代末ロックの分岐点を皮肉と愛情で切り取った一曲│ビートルズ的理想主義とストーンズ的現実主義を対比しながらロックが選び得た生き方そのものを問いかける│LAスワンプの土臭いグルーヴに根差した演奏はカウンターカルチャーが商業と結びついていく時代の複雑さを映す│クラプトンやジョージ ハリスンと深い交流を持ったブラムレットだからこそ書けた内側からの視線も興味深い│ロックの神話を解体しながら信仰心だけは失わない語り口が今も鮮烈に響く
Oasis
Fuckin' in the Bushes
群衆を起動する音の号令
2000年という転換期の緊張を爆音で刻んだインストゥルメンタル│反復するドラムと歪んだギターはビートルズ的叙情を意図的に排し群衆と暴力性を前景化する│労働者階級の怒りと虚無が渦巻くミレニアム前後の英国社会を背景に言葉なきシャウトとして機能する構造が鋭い│サンプリングされた台詞は70年代英国映画の不良文化から引用されオアシスの出自を露骨に示す│ライブ開演SEとして定着したことで曲自体が儀式となり観客の感情を一気に臨界点へ導く存在となった